投資信託の「複利」とは何か。単利との違いと複利効果を高める方法を紹介

リード文

資産運用においては投資期間が長期になるほど、元本に利益を加えて再投資することで複利効果を期待できる運用方法が効率的です。投資信託も、商品選びや運用方法によって複利を味方につけられます。

今回は、複利と単利でどの程度運用に差が出るのかをシミュレーションしながら、投資信託で複利効果を高める方法を紹介します。

目次

そもそも複利とは

そもそも複利とは

複利とは、運用で得られた利益を再投資し、元本を増やしながら運用する方法です。

運用中は利益を手にできませんが、順調であれば利益が利益を生むため、より大きな運用効果を狙いやすいのが特徴です。

投資信託の中には、運用で得た利益を元本に組み入れて再投資することで複利効果を得られ、雪だるま式に資産の成長を目指すファンドもあります。効率的にお金を育てていくためには、複利は無視できないポイントです。

ただし、投資信託には元本や利益の保証がない点に注意が必要です。預貯金とは異なり、複利を活用したとしても必ずしも資産を増加させられるとは限りません。

複利では運用中に得られた利益を元本に加えていくため、相場が下落した際はその影響が大きくなる点には注意が必要です。

複利と単利の違い

資産の運用方法には、複利のほか単利があります。単利とは元本のみを運用する方法です。

複利と単利は下記の式で計算します。

複利:元利合計=元本×(1+年利回り)運用年数の累乗

単利:元利合計=元本×(1+年利回り)×運用年数

例えば、100万円を年利回り5%で5年運用した場合、複利・単利の元利合計は下記の通りです。

複利:100万円×(1+5%)^5≒127万6,282円

単利:100万円×(1+5%)×5=125万円

※運用にかかる費用や税金は考慮していません

※上記は一定の条件に基づく試算を示したものであり、将来の動向や投資成果を示唆・保証するものではありません。

このように、複利と単利では元本と利回りが同じでも、運用益に差が生じます。複利の場合は運用益が元本に加わるため、順調であれば運用を続けるほど得られる利益は大きくなるのです。

しかし、単利の場合は元本の額は変わらないため、利回りの変動がなければ得られる利益は常に一定になります。

複利と単利それぞれの資産の増え方

複利と単利の違い

複利と単利では資産の増え方に大きく差が出るため、長期運用は複利で行うのが理想的です。どの程度の差が生まれるのか、シミュレーションで比較してみましょう。

シミュレーション例:30年間運用した場合の資産残高の違い

ここでは、元本100万円を年利回り5%で運用した場合の複利と単利の資産残高を比較していきます。

複利では、2年目以降利益分が元本に加わって利益が利益を生むため、年数を経るほど単利の元利合計との差は大きくなります。運用年数ごとの元利合計の推移は下記の通りです。

複利 単利
1年 105万円 105万円
2年 110万2,500円 110万円
3年 115万7,625円 115万円
4年 121万5,506円 120万円
5年 127万6,282円 125万円
10年 162万8,895円 150万円
15年 207万8,928円 175万円
20年 265万3,298円 200万円
25年 338万6,335円 225万円
30年 432万1,942円 250万円
複利 単利
1年 105万円 105万円
2年 110万2,500円 110万円
3年 115万7,625円 115万円
4年 121万5,506円 120万円
5年 127万6,282円 125万円
10年 162万8,895円 150万円
15年 207万8,928円 175万円
20年 265万3,298円 200万円
25年 338万6,335円 225万円
30年 432万1,942円 250万円

※運用にかかる費用や税金は考慮していません

※上記は一定の条件に基づく試算を示したものであり、将来の動向や投資成果を示唆・保証するものではありません。

運用を始めてから2~3年は、複利と単利の差は数千円程度です。

しかし、年数を経るごとにその差は数万円、数十万円と広がっていき、30年間運用した場合には、複利と単利で約182万円もの差がつきます。複利効果を利用した運用のほうがいかに効率的であるかがわかるでしょう。

ただし、この比較はあくまで運用益の増え方をシミュレーションしたものになります。投資信託は預貯金と異なり、基準価額の変動により損失が生じることもあることや利回りが変動することは覚えておいてください。

資産が2倍になるまでの期間が異なる

複利と単利では運用効果に差がつくため、運用で資産が2倍になるまでの期間も異なります。利回りと投資期間をイメージできることで有名な「72の法則」・「100の法則」について、簡単に紹介します。

複利での運用:72の法則

72の法則とは、元本を複利で運用した場合、元本が2倍になるまでに必要な期間や概算で求めるための法則です。

2倍になるまでに必要な運用年数=72÷利回り

2倍になるまでに必要な運用利回り=72÷運用年数

単利での運用:100の法則

100の法則とは、元本を単利で運用した場合に元本が2倍になるまでの期間や利回りを簡単に試算できる法則です。

2倍になるまでに必要な運用年数=100÷利回り

2倍になるまでに必要な運用利回り=100÷運用年数

※「72の法則」・「100の法則」の算出結果は将来起こりうるマーケットや社会の変動等が網羅されているわけではなく、その正確性、完全性や将来の成果を保証するものではありません。あくまで複利と単利の違いのおおまかな参考値としてご活用ください。

【投資信託】複利を味方にする 方法

複利と単利それぞれの資産の増え方

投資信託でより大きな複利効果を享受するには、3つのポイントがあります。

長期で投資する

運用を始めて間もないうちは、複利と単利での運用益は、さほど大きな差にはなりません。しかし、シミュレーションのように運用期間が長くなるにつれて差はどんどん大きくなります。複利効果を享受するには、10年、20年単位と腰を据えて運用することがポイントです。

つまり、できるだけ早く投資を始めたほうがより長い期間運用でき、効率的な資産の成長を見込めます。

分配金再投資型の投資信託を選ぶ

投資信託には、大きく分けて一定期間の運用益の一部を分配して投資家に払い出す分配金受取型と、運用益を分配せず再投資する分配金再投資型の2種類があります。

分配金受取型の投資信託は、定期的に運用益を受け取れることがメリットです。しかし、運用に回せる資産が減ることから、再投資型と比較して複利効果は得られません。

一方、分配金再投資型は運用益を自動的に再投資するため、利益が利益を生む複利効果を狙えます。運用中に分配金は受け取れませんが、元本が増えるため、より効率的な運用を実現可能です。

また、分配金再投資型は分配金支払いによる基準価額の下落がないことでも、より高い運用効果を期待できます。

対照的に分配金受取型の場合は、支払われた分配金の分だけ投資信託の純資産が減少するため、基準価額を下げる要因になります。

積立投資をする

積立投資であれば、少額からスタートできるため無理のない範囲の金額で投資を始められます。まとまった資金がない方でも、少額からコツコツ積み立てていけるため、投資を長期的に続けやすくなるでしょう。

また、投資信託で一定額を積立投資する場合、基準価額が上昇しているときには少ない口数を、下落しているときには多くの口数を購入できるため、結果として購入価格が平準化されていきます。

一括で投資すると、購入直後に大きく基準価額が下がることも考えられるなど、購入タイミングの判断が難しいとされます。しかし、積立投資なら購入期間が分散されるため、基準価額の変動による影響を受けにくくなります。そのため、価格変動のリスクを抑えつつ長期投資ができるのです。

これに複利効果が加わるため、より大きな運用効果を狙いやすくなります。

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複利効果を高める長期投資には新NISAを検討してみよう

複利効果を高めるために長期投資をするなら、NISA口座での運用を検討してみましょう。

NISA(少額投資非課税制度)とは、NISA口座内での取引で得られた利益について、非課税とする制度です。

NISA制度は2014年1月からスタートしましたが、2024年1月から制度が大幅に拡充されました。非課税で投資できる枠は年間360万円まで・生涯では合計1,800万円までとなり、非課税期間も無期限、売却した場合にはその分の投資可能額が翌年以降復活するなど、より活用しやすい制度に刷新されています。


なお2024年1月からのNISAには、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」があります。このうち、つみたて投資枠で購入できる投資信託は、長期の積立・分散投資に向いた商品に限定されています。

さらに、「つみたて投資枠」の対象商品には分配金の支払い頻度が低い(毎月ではない)ことなどの要件があることから、複利効果を狙っていく点でも適した商品と考えられます。

もしこれから投資信託で積立投資を始めるなら、「つみたて投資枠」対象の投資信託を選ぶのも一つの方法です。

また、長期投資で大切に育てた資産を売却する場合、課税額もまとまったものになります。その点NISAであれば売却益に対する税金も発生しないため、心理的にも嬉しいものでしょう。

複利による恩恵を可能な限り活かすためにも、ぜひNISA口座での長期投資を検討してみましょう。

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※いずれも成長投資枠でもご購入いただけます

まとめ

元本に運用益を加えて再投資する複利は、元本のみを運用する単利に比べてより大きな運用成果を期待できる運用方法です。投資信託においては、分配金再投資型を選ぶことで複利効果を狙いやすくなります。

さらにNISA口座であれば、大きく育てた資産を非課税で売却できるので、税負担を抑えられるという点でより効率の良い資産形成が期待できます。

複利効果を享受するには、投資期間が長期になるほど有利になります。将来に向けた資産形成には、毎月少額でもできるだけ早くつみたてを始めるのがおすすめです。